IoTとは「Internet of Things」の略で、「モノのインターネット」を指します。近年急速に実用化が進んでおり自動車や家電機器、医療業界などにおける発展が大きな注目を集めております。モノに通信機能やセンサーを搭載してインターネットと接続することで私達の身近な暮らしを便利にしてくれているサービスも多くみられるようになりました。この記事ではIoTを理解するために初心者での分かる意味や仕組み、実現出来ることや課題、活用事例などの基礎知識を簡単に解説していきます。
IoTとは「Internet of Things」の略で、「モノのインターネット」を指します。これまでインターネットといえばパソコンやスマートフォン端末を用いて利用するものでしたが、IoTはモノそのものに通信機能やセンサーを搭載してインターネットと接続する技術のことをいいます。近年登場した身近なサービスで例えると、自宅の家電とスマートフォンを連動させてスマートフォンをリモコンとして利用するサービスやAI機能を搭載したスマートスピーカーなどもIoT製品の一種になります。
今までのインターネットをはじめとしたネットワーク通信と違う点は、人が能動的に「操作」をしなくとも、IoT技術を搭載したモノが情報を感知しデータを送ることで目的を達成することが出来るということです。私達の身近な生活の利便性や安全性を上げる技術であること、そして最近でいうと5Gの通信サービスが開始されることもありIoTの技術は今非常に注目を集めています。
次にIoTの技術が具体的にどういった仕組みで構成されているのかを具体的に解説していきます。IoTを構成する要素は、「デバイス(センサー)」、「ネットワーク」、「アプリケーション(クラウド)」の4つに分けることが出来ます。大まかな動きの流れとしては、まずIoTデバイス(センサー)からデータを取得します。そのデータを通信手段であるネットワークを介してサーバーに送り、アプリケーションによってデータを分析し課題解決を行います。
まずは主体となるモノ=デバイスです。具体例で挙げると車や家電、スマートフォンなどです。それらのデバイスに必ずセンサーを装備することで、そのセンサーが様々な情報を感知し計測・数値化します。
モノの状態をデバイスのセンサーがセンサリングすると、次はそのデータを端末に送るためのネットワークが必要になります。ネットワークの代表的なものは無線ネットワーク(Wi-Fi)ですが、他にもBluetoothや移動通信システム(4Gや5G)などのネットワークもあります。データの重さや速度、距離など必要な用途に応じて最適なネットワークを選択する必要があります。
ネットワークを介して送られた情報はクラウドやストレージに記録・蓄積され、アプリケーションによって分析や可視化されます。端末に届いた段階のデータはまだ暗号だったり、量が膨大だったりするためアプリケーションで人間が理解しやすいレベルにまで最適化したり整理、抽出することで活用されます。
次にIoT技術が具体的に実現できることについて大きく分けると「モノを遠隔で操作する」、「遠隔からモノの状態を把握する」、「モノ、人の動きを検知する」、「モノとモノを繋ぐ」といった4つに分類することが出来ます。
まずIoT技術で最も代表的な技術が「モノを遠隔で操作する技術」です。外出先から自身のスマートフォンを通じて自宅の家電やサーバーを操作します。これは私達の身近な生活にも取り入れられつつあり、エアコンの電源を自動で入れることによって帰宅時に部屋を快適な温度にしたり、留守番中のペットにフードサーバーから餌をあげられたりするなど、生活をより快適に便利にするサービスに取り入れられています。
遠隔からデバイスを通じてモノの状態を把握することができるのもIoT技術の一つです。モノに搭載されたセンサーから情報を取得して、ネットワークを通じてモノの状態を把握することが出来ます。具体的な例を挙げると、身近な生活においては、自宅の照明の状態をスマートフォンデバイスを通じて確認することで消し忘れを防いだり、ペットの状態を遠隔から確認することが出来るサービスがあります。それ以外にも医療現場において患者の心拍や呼吸などの状態に異常な数値が現れた際にアラートを出す技術などもあり、様々な業界でこの技術が応用されています。
IoTの技術には「モノ、人の動きを検知する」ことも可能です。モノや人の動きをセンサーで検知しIoT技術を組み合わせることで実現しています。既に様々な業界でこの技術も応用されていますが、代表的な例を挙げるとすると「自動運転技術」でしょう。車に搭載したセンサーが収集した走行状況や位置情報を分析し車(モノ)に送ることでデータに応じた運転が出来ます。他にも身近なサービスで言うと、電車やバスの混雑状況を把握する技術や人が動くと検知し自動で照明が点く機能もこのセンサリング技術が使われています。
これまで紹介した技術を応用してIoTではモノとモノの間でデータを送受信させて複数の機器を活用することが出来ます。この技術のことをMtoM(エムトゥーエム)といいます。MtoMの代表的な例はスマートスピーカーを用いた技術です。例えばスマートスピーカーに口頭で電子機器の電源を入れることを指示し起動させたり、カーテンを開閉するなどのことが可能です。また自動運転の応用として、信号機からのデータを自動車が受信することで速度を落とすなどの技術も開発されています。
IoT技術はすでに様々な業界で活用されています。ここでは具体的な活用事例をご紹介します。
医療業界でのIoT活用で代表的なものはウェアラブルデバイスが挙げられるでしょう。身体の一部にウェアラブルデバイスを装着し自分自身の健康状態の把握や記録、また医師や看護師とその情報を共有することで在宅患者の管理やオンライン診療の場でも活用されています。また最近では、医療分野にて、医療機器とヘルスケアのITシステムを繋ぐ概念をIoMT(Internet of Medical Things)といい医療現場でのIoT活用は非常に注目を集めています。患者のリアルタイムなデータを取ったり、機器・設備の動作状況を監視する業務をIT化することで、医療従事者にかかる負担を減らています。
物流業界でもIoT技術の活用は広がりをみせています。例えばAmazonの物流倉庫では、ピッキング作業を人ではなくピッキングロボットが注文に応じて対応することで作業の効率化や人件費の削減を実現しています。また配送手段についてもドローンや自動運転のIoTを用いた技術が注目されており、まだまだ実用化まではされていないものの、輸送にかかる時間や人件費の大きな削減になることから期待されているサービスといえます。
私達が普段利用する公共交通機関でもIoT技術が取り入れられています。例えば身近な例でいうとバスの位置情報把握機能です。ユーザーはバス停に設置されているQRコードを読み込むとリアルタイムな運行状況を把握することが出来ます。またタクシー業界においても、近年タクシー配車アプリのサービスの普及が進んでおり、空車情報の確認やタクシーの手配をスマホで簡単に依頼することが可能になりました。今後、世界的にも注目されているのは「自動運転システム」の実用化でしょう。車のセンサーが収集した走行状況や位置情報のデータをAIが分析し、その分析結果を車に送ることでデータに応じた運転ができるという仕組みです。実用化が可能となれば世界的にも私達の生活が大きく変わるインパクトが有るため期待されています。
農業におけるIoT活用を「スマート農業(アグリテック)」といいます。農業は農業従事者の高齢化が課題となり、後継者不足や耕作放棄地の増加が深刻です。そこで少しでもその課題を解決するためにIoT技術を積極的に取り入れようと各社開発を進めています。具体的な例をあげると、農地にセンサーを取り付けることで水やりや肥料を自動化するシステムが代表的です。ただ水やりを行うのではなく、その日の日射量や土壌の状況に応じて最適な量に調整をしたりしながら与えることで節水効果や作業の効率化に繋がっています。
非常に注目を集めているIoT技術ですが、まだまだ課題もあるのが現状です。次にIoT技術の課題について解説していきます。
IT業界の人手不足は長年の課題であり、IoTにおいても同様です。IoTエンジニアやデータサイエンティストは、非常に高度なデータ分析スキルを要するため、この様なスキルを持つ人材の需要は非常に高まっていてスキルを持った優秀な人材を確保するのは困難になっています。
IoT技術は大量のデータから成り立つ技術であるため、セキュリティ対策は非常に重要です。IoTの技術は私達の生活に根付いているサービスも多くあり、個人のデータを企業が保有する量は莫大といえますし、IoTデバイスはモノと繋げるためにユーザーがネットワークと繋がっているという意識を持ちづらいといった側面もあります。また医療機関でも活用されているため、個人の命に関わる様な情報もありセキュリティリスクは高いです。ユーザーが安心して使うためにIoTでは徹底したセキュリティ対策が必須といえます。
IoTの技術は非常に高度で複雑性を持った開発技術が必要となるため、開発段階でのヒューマンエラーを解決していくことも重要となります。機械を自動で動かす仕組みを作るのは人です。開発段階で人的ミスが起これば機械が正常に動かないことは当然です。実際に、自動運転の技術でも自動ブレーキが正常に作動せず事故になってしまったというケースもあり、開発段階でのヒューマンエラーについてはまだまだ大きな課題となっています。
2021年時点で国内のIoT市場におけるユーザー支出額はおおよそ6兆3125億円、2025年には10兆1902億円にまで成長するといわれています。この成長率は日本だけではなく世界的にみても同様です。世界の市場規模でみると2021年の市場規模は約3,845億米ドル、2027年の推移予測は5,664億米ドルにまで成長すると予測されています。成長の要因としては、5G通信技術の発達や労働人口不足による各業界からの需要の高まりなどがあります。国内における産業別の需要をみてみると、製造業や小売、物流業界でのIoT活用が今後も高まるとされています。どの業界においても労働力の減少は顕著であり、国としてもIoT活用に力を入れた施策を進めていることから今後も技術の導入が益々広がっていくでしょう。
IoTエンジニアとはIoT技術を用いたシステム開発を行うエンジニアです。IoT製品やサービスの開発は多くの技術が組み合わさっています。担当するサービスや製品によっても業務の内容は大きく異なってくるのも特徴で、必要なスキルも多岐に渡るため特定のスキルを持ったエンジニアが開発を担当するというよりは、ネットワーク、組み込み、セキュリティなどそれぞれの分野に精通したエンジニアが協力して進める仕事になります。それぞれが協力しながら進めることが大事になるため、IoTエンジニアは特定の分野だけに精通しているだけでなく、ハードウェアからソフトウェアまで幅広い知見をそれぞれが持ち合わせているということが必要になります。
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IoTを理解するために初心者でも分かる意味や仕組み、実現出来ることや課題、活用事例などの基礎知識について簡単に解説させて頂きました。まだまだ課題も多いIoTですが、今後も様々な業界で技術が広がり私達の生活や社会全体をより豊かで快適にしてくれる技術であることは間違いありません。IoTについてについてこの記事で記載されている最低限の内容は理解しておくようにしましょう。