会社員であれば税金関係は全て会社が計算してくれて、給与から天引きなど諸々の手続きを行ってくれるため、社員ひとりひとりが税金に対する知識を持っている必要性があまりありません。フリーランスで活動する場合、税理士と契約を結んでいない限りは、自分で支払うべき税金を把握し、税金の種類によっては税額を自分で計算して、申請・納税ということを自発的に行う必要があるのです。そこでこの記事ではフリーランスが税金について必ず把握するべき3つのこと、主に税金の種類、確定申告について、節税対策について詳しく解説していこうと思います。
まずはフリーランスとして活動している方が支払う必要のある税金の種類について解説させて頂きます。
なんとなく聞いたことがある税金から、あまり馴染みのない税金まで、実はフリーランスとして活動していく際にはこれら全ての税金を個別に納税しなくてはならないのです。フリーランスになって初年度の方は少し大変に感じてしまうかもしれませんが、理解すればひとつひとつはそんなに複雑なものではありません。
1年間に得た所得に対して納税額が決定するのが所得税です。1年間の所得合計が38万円を超える場合、確定申告を行い自分で所得税額を算出し、国に納税する義務があります。
ここで言う「所得」と言うのは「収入」とは異なりますので注意が必要です。ちなみに基礎控除というのは所得税や住民税などの計算を行う際に、全員一律で差し引かれる控除のことです。
所得に応じて累進課税制によって税率は5%〜45%まで設定されます。
上記の通り、所得が大きくなれば、それに比例して税率も上昇していく仕組みになっています。4,000万円以上の所得がある人は、所得税だけでなんと半分近くの税金を納めなくてはいけないのです。
次に所得税の計算方法について紹介します。
①②の順番に計算していくことで所得税額を求めることができます。
例えば収入が800万円で経費が200万円のフリーランスの場合、
その他控除10万円、基礎控除38万円、青色申告特別控除65万円を上記の計算式に入れて計算すると…
このケースの場合、所得税として納税しなくてはならないのは、664,500円となります。
この所得税額をできる限り抑えるためには「経費」として計上可能な費用については漏れなく計上し、受けることができる控除は全て受けるということが大切になってきます。これらについては後ほどお伝えしていきます。
所得税が国に対して納税する税金である一方、住民税は自分の住む都道府県、市区町村に対して納税する税金となっております。全国的に税率はほぼ一律で課税所得の10%と定められているのですが、一部地域において若干税率が高い地域、低い地域が存在するようです。例えば神奈川県は県民税が0.025%高く、名古屋市の市民税は0.3%低いです。
ちなみにこの税率10%の内訳は市区町村に対して6%、都道府県に対して4%と決まっています。住民税は年収が33万円を超える場合、確定申告する必要があります。所得税同様、課税収入が増えれえば増えるほど金額は大きくなり、前年の所得をベースに翌年の住民税が決定されます。
会社員時代は社会保険に加入しており、保険料の半額を会社が負担してくれているというのが一般的です。フリーランスとして活動するにあたって、国民保険に切り替えるのか、退職する会社の社会保険を任意継続するのかという2択があり、国民保険を選ぶ場合は、別途手続きを行う必要があります。
フリーランス(個人事業主)の社会保険に関する知っておくべきことについてはこちら>>
国民保険への加入手続きは社会保険の失効後、各市区町村の窓口で手続きが可能となります。保険料の金額や納付方法は各市区町村によって異なり、一括もしくは期ごとに納めることになります。ここで支払う保険料は支払い年度の確定申告で控除されるので、忘れないようにしましょう。
国民保険と同様、会社員時代は厚生年金に加入しているケースが一般的ですが、フリーランスになると、新たに国民年金に加入し、税額を支払う必要があります。国民年金は基礎年金と呼ばれ、20歳以上60歳未満の国民全員が加入する必要があります。会社員時代に支払っていた厚生年金は、国民年金に上乗せされて給付される年金で、一般的に会社が半額を負担して支払っています。
個人事業税とは事業所の所在地として申請をしている都道府県に納めることになります。つまり自宅を事務所として申請している方は自宅の住所がある都道府県に事業税を納めるということです。この税金の使い道としては、その地域の公共サービスの税源として使われ、道路工事、公共事業、社会福祉などのサービスに当てられることが多いです。
フリーランスの消費税についての納税義務が発生するのは年間の合計収入が1,000万円を超える場合に発生します。原則として2年前の年間売上をベースに計算されるため、合計収入が1,000万円を超えた翌々年には消費税が別途必要であることを頭に入れておきましょう。
フリーランスとして働く場合、自分自身で手続きする必要がある「確定申告」。事業においてかかった1年間の費用と経費を記録しておき、簿記を提出する必要があります。毎年発生する業務で、なかなか効率化するのが難しい確定申告業務ですが、近年は会計ソフトなど便利なツールが登場しているため、それらをうまく活用して本業の工数を奪われないようにしましょう。
フリーランスが事業を行い、1年間に生じた所得が基礎控除である38万円を超えた場合、確定申告を行う義務が発生します。もし仮に確定申告を忘れてしまった場合や遅れてしまった場合、どのような問題が発生するのでしょうか?
期限内に確定申告を行わなかった場合、本来の納税額に加えて、割り増しで発生する税額を「無申告加算税」と言います。この税額には基準があり、税額50万円までは15%加算、50万円を超える税額に対しては20%加算というように決められています。
このように期限から遅れてしまうことで通常の税額に対して15%〜20%も加算されると、経費や控除などを積み上げて税金を抑えた意味がなくなってしまいます。それくらいインパクトの大きなペナルティですが、税務署が調査を開始する前に自主的に遅延を申告した場合、15%〜20%の加算額が5%まで減額される場合があります。
加えて、確定申告の期限終了から1ヶ月以内に自主申告し、期限内に申告する意思があったことを認められた場合、無申告加算税は免除となります。
確定申告を期限内に行わなかった場合、延滞税というものも発生します。こちらは遅延が長引けば長引くほど、利息のように増え続けるペナルティとなっており、確定申告を忘れてしばらく期間が経った後に気づくと、恐ろしいくらい税額が膨らんでしまっていたというケースも考えられます。
基本的に納税の遅延が発生した場合、上記のペナルティが適用されるのですが、より悪質と判断される場合、「重加算税」というものが課せられる場合があります。このペナルティは本来の税額に対して35%〜40%程度増額するという設定になっています。これほどまでのペナルティを受ける対象としては、税金の計算自体に隠蔽が見られたり、税務署から度重なる指摘を受けても改善が見られない時に発動します。
確定申告の申告方法については青色申告、白色申告から申告方法を選択肢、指定の用紙に必要な情報を記入していきます。また申告の際には1年間の収支が記録された簿記(複式簿記または単式簿記)が必要になるため、こちらも合わせて用意するようにしましょう。
詳しい確定申告の方法については以下の記事をご覧ください。
確定申告をする際に検討しなくてはならない「青色申告」と「白色申告」について。確定申告には実は3種類あり、控除額によって3段階に分けられている形になります。簡単にそれぞれの違いを紹介させて頂きます。
上記の通り3通りの方法があり、下に行くほど節税効果が高くなっていますが、その分手続きの煩雑さが増すため、簿記の知識が必要になってきます。白色申告と青色申告の10万円控除の場合、単式簿記と言って収入欄から支出欄の合計を引いた金額を示した帳簿は、家計簿などに近く、比較的手軽に誰でも計算・記入できるところがメリットです。一方で青色申告の65万円控除で申請する場合に必要となる複式簿記は貸し借りが一致するように記載するもので簿記を学んだことがない方にとっては、少し抵抗感がある記述方法を取る必要があります。
青色申告と白色申告について、メリットやデメリットなど詳しい内容は以下の記事をご覧ください。
フリーランスの場合、受注した案件によっては源泉徴収されているものと、されていないものがあることを理解する必要があります。これを把握しておかないと、確定申告の際に損をしてしまう可能性があります。
フリーランスとして受ける報酬の中で、源泉徴収される対象は以下の案件と定められています。ただしこれらの案件を法人から受注する場合は源泉徴収が差し引かれますが、取引先が個人事業主の場合は発生しないケースもあります。その辺りは取引開始時に相手方と相談するようにしましょう。
参照:国税庁
フリーランスが支払う税金を最低限にするためには、経費を計上するか各種控除を受けるかの2通りの方法があります。もちろん2つの方法は併用すること可能なので、これから解説することを頭の片隅においておき、しかるべきタイミングでしっかりと手続きを行うようにしましょう。
フリーランスが事業用経費として認められるのは以下の通り。
これらに当てはまる費用を経費として漏れなく計上することで、それが積み重ねって大きな節税効果を生み出します。
フリーランスが節税対策に利用できる控除には以下のようなものがあります。
これらの控除で適用できるものは適用していくことで、節税をすることができます。
フリーランスとして独立した際に避けては通れない税金について、解説させていただきました。納税するべき税金の種類を把握し、各種手続きの方法を理解した上で、税金を最低限に抑えるための節税対策についても、知らずに損してしまうということがないよう、しっかりと情報収集を行い、正しい知識で漏れなく、無駄なく納税を行なっていきましょう。