世界的に人手不足といわれているITエンジニア。国によってエンジニアの社会的地位が異なっていたり、年収差も大きいのが特徴です。この記事では各国のエンジニアの給与相場の詳細とそれに基づいた世界の平均年収やランキングについて詳しく解説していきます。
日本のエンジニアは世界各国のエンジニアと比べると比較的給与が低いと言われています。基本的にプログラミング言語は世界共通語であるため、語学さえビジネスレベルで話すことができれば日本以外の国に拠点を置いて活躍するといった選択肢を取るエンジニアも少なからずいるでしょう。特にIT大国であるアメリカや多くのテック企業のオフショア先でもあるインドは、他職種と比べるとIT人材の収入水準が非常に高く、社会的地位も高い傾向にあります。エンジニアの給与事情には国独自の文化や制度なども関係していることが多いです。
日本のエンジニア平均年収は約542万円です。日本における正社員の平均年収が約410万円程度と言われているためエンジニアの年収は比較的高い傾向にあります。また人材不足といわれているエンジニアの人口は2021年現在、約122万人で世界第四位のエンジニア人口となっています。2010年前後ではエンジニアの人数は約80万人程度でしたので、10年単位でみると増加しましたが、エンジニアのニーズは益々高まっているため、有効求人倍率は3.1倍と人材不足は顕著です。
アメリカのエンジニア平均年収は約880万円となっています。アメリカ人全体の平均年収が約568万円となっているため、エンジニア人材と他職種との年収差が非常に開いているのが特徴です。またアメリカにおけるエンジニアの人口は約409万人で世界第一のエンジニア数となっています。アメリカがエンジニア人材を優遇する背景には「ビル・ゲイツ」や「スティーブ・ジョブズ」などエンジニアから社長になり、社会的な影響を与えるサービスやプロダクトを生み出してきた人達がいるということです。エンジニアを作業者として評価するのではなく社会的地位も高く、サービスを生み出す職種であるという認識があります。
中国のエンジニア平均年収は約240万円です。中国人全体の平均年収が約135万円となっているため、一見低いように感じますがやはりエンジニアは他職種と比べて高い傾向にあります。中国におけるエンジニアの人口は約227万人でアメリカ、インドに次いで世界第三位の人数となっています。Huaweiをはじめとした中国テック企業の成長は著しく、国内のインターネット利用者は8億人にもなる大国です。新しいサービスやプロダクトの開発スピードも早いためエンジニア職に従事する人口も多いです。
インドのエンジニア平均年収は約500万円程度と言われています。外資系企業のシニアエンジニアになると年収1000万円を超えるケースも少なくありません。カースト制度の名残があり、まだまだ貧富の差があるインド人全体の平均年収は約180万円であるため、エンジニアは非常に高額な収入を得ています。インドにおけるエンジニアの人口は約231万人と世界第二位の人数となっています。シリコンバレーの約2割がインド人エンジニアと言われているように、世界的にみても優秀な人材を多く輩出しています。
その背景にはインド人は非常に競争意識が強いことやカースト制度がある中でもIT業界への就職を目指せば高収入を目指せる事が確約されていることでスキルアップに励む人材が多いといえます。
イギリスのエンジニア平均年収は約509万円です。イギリス人全体の平均年収が約404万円程度といわれている為、イギリスにおいてもエンジニアは非常に高収入を得ています。イギリスにおけるエンジニア人口は約100万人で世界第六位の人数となっています。
フランスのエンジニア平均年収は約500万円程度です。フランス人全体の平均年収が約446万円といわれている為、他職種と比べると高い水準になっています。フランスにおけるエンジニアの人口は約67万人と世界第十位の人数です。フランスでは数学が出来ないとエリートにはなれないと言われるほど、「数物重視」の考え方がありエンジニアの社会的地位は比較的高い職業であります。
スイスのエンジニア平均年収は約1048万円程度です。世界92カ国のエンジニア平均年収ランキングにおいてもアメリカを抜いて第一位の高給与です。しかしスイス人の平均年収が約908万円と非常に高いことから、エンジニアが軍を抜いて高所得な職種であるというわけではありません。スイスは他の国と比べても物価が高く、健康保険料や企業年金額、所得税なども引かれるため、給与額についても平均的に高い水準に設定されている。
デンマークのエンジニア平均年収は約818万円です。平均年収を世界的にみても第四位の高給与額となっています。デンマーク人全体の平均年収が約654万円ですので、特にソフトウェア開発に従事する技術者は高所得者と言って良いでしょう。その背景にはIBMやマイクロソフト、Uberといった外資系企業の誘致に成功しヨーロッパの「デジタルリーダー」とも呼ばれています。しかしながら人口の高齢化と減少化という問題がありIT人材は不足している。
韓国のエンジニア平均年収は約500万円程度で、日本とさほど変わらない水準です。韓国人の平均年収は約330〜580万円といわれており、業界や地域によってかなり格差があるのが現状です。韓国におけるエンジニアの人口は約72万人程度といわれています。韓国においては金融関係やマスコミ関係、4大財閥(サムスン、ヒュンダイ自動車、SK、LG)などが特に高給でIT業界でも財閥企業のグループが市場を独占するような状況です。したがって下請けを担当する企業については労働環境や待遇についても整っていないこともあります。
シンガポールのエンジニア平均年収は591万円です。シンガポール全体の平均年収が639万円であるのでエンジニアという職種が特別高いということはないです。シンガポールといえば金融や観光業が盛んなイメージがありますが金融社会の広がりとともに、政府も第二の柱としてIT産業への注力を行っています。人材確保の為に、エンジニアを公務員として働けるように給与を2割上昇させたり、キャリアパス開発にも力を入れたりと様々な施策を行っています。とはいえ人件費が高額であったり、人口も減少傾向にあるため他のアジア各国と比べるとオフショア開発などには適さない可能性もあるでしょう。
タイのエンジニア平均年収は195万円です。タイ人の平均年収は約138万円程度といわれている為、平均より少し高めになっています。これまでアジア諸国に比べるとIT人材は比較的少ないといわれていましたが、政府もIT人材への教育に力を入れていたり、財閥系企業や大手企業がIT人材の育成に取り組んでいます。給与水準は低いですが、エンジニアの給与所得の伸び率でみるとアジア10カ国中タイは38.3%と一番の伸び率となりました。
ノルウェーのエンジニア平均年収は671万円です。ノルウェーの平均年収が約800万円であるため、エンジニアという職種だからといって給与が高く設定されているわけではありません。ノルウェーは職種によって賃金格差が生まれないようにオーナーではなく労働組合的な組織が決めていることが背景にあります。
イスラエルのエンジニア平均年収は870万円です。現地のイスラエル人の平均年収は約250〜300万円といわれており、国民の平均所得と比べるとかなり差があります。その理由としては、イスラエルは「中東のシリコンバレー」といわれるほどテック企業やスタートアップが進出しています。コワーキングスペースを国が運用したりと国としてもITベンチャー企業への支援を手厚くしており、年間でアメリカを上回る数のITベンチャー企業が立ち上がっています。また「外国人はイスラエル人の平均年収の2倍以上の額をもらわなけれないけない」という決まりがあるため、イスラエルに住む外国人エンジニアの給与水準が高くなっています。
ドイツのエンジニア平均年収は654万円です。ドイツ人の平均年収は約740万円程度で全体の平均値でみるとエンジニアの所得がすごく高いというわけではないです。ドイツは日本に比べても税金が高いため、妥当な賃金といっていいでしょう。ドイツ国内では特にベルリンがITスタートアップ企業が沢山あり、英語さえ話せれば業務が出来ることやドイツ国内だけではなかなか人材が集まらないこともあり海外人材を採用するというケースもあります。
順位 | 国 | 平均年収 |
1位 | スイス | 1,048万円 |
2位 | アメリカ | 880万円 |
3位 | イスラエル | 870万円 |
4位 | デンマーク | 818万円 |
5位 | ノルウェー | 671万円 |
6位 | オーストリア | 667万円 |
7位 | ドイツ | 654万円 |
8位 | ルクセンブルク | 649万円 |
9位 | オーストラリア | 599万円 |
10位 | シンガポール | 591万円 |
18位 | 日本 | 543万円 |
世界のエンジニア給与事情を理解するために国別の平均年収や人口、ランキングなどについて解説させていただきました。日本のITエンジニアの平均年収は約542万円であり、世界で18位ということが分かりました。そして日本のITエンジニアの人口は約122万人であり世界で第四位です。世界的なエンジニア不足は続いており、給与水準は各国年々上昇傾向にあります。今後もエンジニアは世界で重宝されることから高所得の仕事として人気を集めていくことでしょう。