新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、働き方の多様化や価値観が大きく変わりました。その中で注目を集めている一つの働き方がワーケーションです。ワーケーションとはWork(働く)とVacation(休暇)を組み合わせた造語です。感染拡大防止の観点からテレワークの導入に伴い、社員の心身の健康や生産性の向上を目的とした働き方として近年注目を集めています。この記事ではワーケーションについてのメリット・デメリットや種類、オススメのエリアなどを解説していきます。
ワーケーションとは、リゾート地や地方のエリアなど普段の職場とは異なる環境で働きながら休暇取得等を行う仕組みのことをいいます。文字通りWork(働く)とVacation(休暇)という単語の造語のため、働きながら旅行やリゾート地でリフレッシュするという目的があります。観光庁はワーケーションを【休暇型(福利厚生型)】と【業務型(地域課題解決型、合宿型)】に分類しています。休暇型は休暇の合間に勤務日を入れて、観光地などでテレワークを行い長期休暇取得促進を目的としたものです。
一方業務型とは地域関係者との交流を通じて、地域課題の解決先を共に考えることを業務の一貫としたり、合宿のような形で職場全体で観光地に赴き、普段とは違う環境での業務を行うことでコミュニケーションが活発になったり、創造的な発想が生まれることを目的としたもののことをいいます。ワーケーションといっても上記の様に取り入れる目的は企業ごとに違っており、様々なメリットがあるのです。
次にワーケーションの種類について具体的に解説していきます。
移住や定住を希望する個人が、二拠点居住などを通じて、働きながら地方で生活の場を持つワーケーションです。新型コロナ感染拡大に伴い、テレワークが主流の働き方になったことも背景に都心部に住むことに疑問を持ち、地方に移住をしたり、生活の場を田舎と都会の二拠点に持つ人が増えました。地方自治体もそういった都心部の個人向けに移住を支援するプログラムを行ったりして地域活性化に繋げようという働きも活発です。
企業が本社の一部の機能や部署を地方へ移転する動きも近年注目を集めています。政府としても企業の東京一極集中化を問題視していて、2015年に「地方余点強化税制」という施策を打ち出しています。東京23区から地方へ移転する場合や地方で拠点を拡充する場合に税制の優遇措置を受けることができる制度により地方の雇用者数を拡大させる目的があります。この制度が出来て数年はなかなか数が増えなかったものの新型コロナ感染拡大が潮目となってこういった制度を利用する企業も増えつつあります。
地方へ移転するということは、人材確保の問題や取引先の問題などデメリットもありますが、オフィス賃貸の経費削減、地域貢献によりブランドイメージの向上など企業にとっても様々なメリットが得られます。
企業がワーケーションを促進することで長期休暇取得を社員に促すことが出来ます。主に旅行やリゾート地へ行き休暇を取得することでリフレッシュを目的として導入しているため福利厚生としての要素が強いです。したがって社員にとっても満足度が高まりモチベーションの向上に繋がったり、心身ともにリフレッシュすることで業務の生産性が上がる効果があるでしょう。また企業にとっても優秀な人材の確保や有給取得率の向上に繋がるため双方にメリットがあります。
次にワーケーションのメリットについて具体的に解説していきます
ワーケーションは社員個人の好きな場所で仕事をすることが出来ます。心身を癒すことの出来る場所に身を置けるため、モチベーションの向上やワークライフバランスを保ちながら働くことが出来ます。新型コロナ感染拡大により注目を集めているワーケーションですが、実際に導入している企業はまだまだ少ないため社員の満足度や定着にも繋がるでしょう。またワーケーションによってリフレッシュすることにより集中が途切れず生産性が上がることも分かっています。また普段とは違う場所に身を置くことで新しい発想が生まれたり、創造性の向上も期待出来ます。
導入企業のメリットでいうと、2019年4月から働き方改革の施策として年次有給休暇の取得の義務化が企業に課されました。全国的にも有給休暇の取得が促進されている中で企業も様々な取り組みを行っていますが、ワーケーションを導入することにより、長期の連休を取得することになるため有給休暇の取得率が向上します。企業としてのブランドイメージ向上だけでなく、社員の業務効率向上や健康促進にも繋がります。
地方圏にとって、人口減少や高齢化は深刻な問題です。ワーケーションによって移住や定住する人が増えることにより人口増加に繋げることが出来ます。またワーケーションで観光客が増えることによって地域の環境業や商業が盛り上がることが期待されます。もともと観光業が活発でなかった地域でもワーケーションが出来る環境や仕組みを整えることによって低コストでも人を誘致することが可能なため、力を入れている地方自治体も増えてきています。
次にワーケーションのデメリットについて具体的に解説していきます
個人が好きな場所で業務を行うため、離れた場所でも問題なくシステムやインターネットに接続出来る環境を企業側は整えなければいけません。接続の不具合があるだけで業務効率は下がってしまうためどんな環境においても適応できる環境を整えることが必要です。またオンラインでの商談、会議ツールやチャットツールなど社員がテレワークでも問題なく通常業務が行える様にするためには様々なツールの導入も検討する必要があるでしょう。またワーケーションで一番のリスクは情報漏えいや端末の紛失、盗難のリスクが格段に高くなるという点です。万が一に備えてセキュリティ強化の対策もとっておく必要があります。
ワーケーションの場合、社員の業務と休暇の線引きが曖昧になります。会社の業務に合わせて就業規則を整備したり、フレックス制の導入を検討したりするなどルールの見直しが必要になるケースもあります。社員がメリハリを持って業務に取り組むためにルールを整備するだけではなく、しっかり浸透させていくことも必要でしょう。また万が一ワーケーション中に事故が発生してしまった場合も企業側が状況把握することが難しいため労災の適用になるのかどうかなど認定が難しくなることもリスクとして考えられるでしょう。
上記のように仕事と休暇の線引きが曖昧になることによって企業側にデメリットがありますが社員個人のデメリットに繋がるケースもあるでしょう。線引きが曖昧になってしまうが故に時間外労働がかえって増えてしまったり休日にも仕事をしたりするケースも少なくありません。就業時間や業務の内容を明確に定めて、組織全体としてもメリハリを持った働き方を促進することでワーケーションは成立します。
リモートワークとは会社以外の自宅やレンタルオフィス、コワーキングスペースなどで働くことをいいます。働く場所については所属している会社によって限定されているためどこでも好きな場所で仕事をしても良いというわけではありません。一方ワーケーションの場合は、休暇中に滞在しているリゾート地や観光地で仕事を行うという働き方になります。したがって個人の好きな場所で休暇取得を目的とした考え方になります。
リモートワークについてはとくに現代においては新型コロナウィルスの感染防止の為に人の移動や密集を避けるための目的で導入されているケースが多いですが、ワーケーションの場合は休暇取得を促進するという目的で導入されているケースが多いです。それぞれ働き方は似ていますが導入目的については大きく異なっているということを理解しておくと良いでしょう。
多くの地方自治体でワーケーションの受け入れ体制を積極的に整えています。ここではおすすめの自治体を紹介します。
長野県はワーケーション誘致を先進的に行っていることで有名です。仕事をしながら休暇を楽しむ取り組みとして「信州リゾートテレワーク」を推奨しています。導入企業に信州リゾートテレワーク実施支援金という補助金制度を実施していたり、宿泊業者へのサポートも手厚く宿泊プランの開発相談窓口や実施に必要な経費や宿泊費を一部支援する制度などもあります。自然豊かで都心部からもアクセスの良い長野県はオススメの自治体といえます。
県内唯一の空港である南紀白浜空港は羽田空港から1日3便飛行機があり、意外とアクセスの良い場所です。和歌山県も先進的にワーケーション誘致に取り組んでおり、ワーケーション・コンシェルジュを設けたり、情報交換会などを積極的に行っています。特に企業誘致に力を入れていて、セールスフォース・ドットコムやNECソリューションイノベータ、三菱地所など名だたる企業が和歌山県白浜町にサテライトオフィスを設置しています。
一年中過ごしやすい気候でリゾート地としても非常に人気の高い沖縄県は政府がワーケーションに力を入れている自治体の一つです。既存の宿泊施設が元々非常に多いため県内の既存施設を改修しリモートワークの整備を支援する補助金や沖縄でワーケーションを行うモニターツアーの実施なども企業向けに行っています。他県にはない気候や自然豊かな環境が整っているのが沖縄県の特徴のため、非常に人気の高い自治体であるといえます。
ワーケーションに関連する働き方を見ていきましょう。
リモートワークとは「Remote(遠隔)」と「Work(働く)」の2つの単語が組み合わさって出来た造語です。この単語の意味通り、「オフィスとは離れた場所で業務をおこなう」勤務形態のことをいいます。2016年頃から政府が「働き方改革」を掲げ、労働人口減少問題を解決するために様々な制度や多様な働き方を取り入れる企業が増えました。女性の雇用機会の促進や人口減少は日本にとって大きな課題です。それでもリモートワークという働き方を導入している企業が多くあったわけではありません。新型コロナ感染拡大により、それまでは導入を検討していなかった多くの企業で導入が進みました。感染拡大のリスクから国民を守るために政府が啓蒙したことが導入の背景にはありますが、様々な企業でスムーズに導入が進んだ要因はインターネットやクラウド、リモートワークに必要なITツールなど急速なテクノロジーの発展が大きく影響しています。
リモートワークのメリット・デメリットについて解説された記事はこちら>>
ノマドとは英語で「nomad」、フランス語で「nomade」を語源としている言葉で「遊牧民」という意味があります。その言葉の語源通り、ノマドワーカーとは遊牧民のように定住地を持たずに様々な場所で自由に仕事をする人たちの総称です。PCやスマートフォン、タブレットなどのITツールを用いてWifi環境下で働きます。よくフリーランスと混同されがちですが、ノマドワーカーは働き方を指す言葉であり、フリーランスは企業との雇用契約形態の事を指し、似ている様で意味は異なっています。働く場所も時間も自由な分、全ての業務タスクを自分で管理しなくてはいけないため、自己管理が得意な人でないとノマドワーカーにはなれません。
ノマドワーカーのメリット・デメリットについて解説された記事はこちら>>
ワーケーションという働き方を理解するために初心者でも分かるメリット、デメリット、おすすめのエリアなどについて解説をさせていただきました。ワーケーションを一言で表すと『リゾート地や地方のエリアなど普段の職場とは異なる環境で働きながら休暇取得等を行う仕組み』です。この働き方のメリットとして「社員満足度の向上」「有給取得率の向上」「地域活性化」などが挙げられます。ワーケーションについてこの記事に記載されている最低限の内容は理解をしておくようにしましょう。