SAP(エスエイピー)は欧米最大のソフトウェアメーカーSAP社が開発・提供するERPパッケージのことです。SAPとERPの違いについて答えられない方は意外と多いのではないでしょうか?実はSAPはERPの一種なのです。SAPはERPの中でもシェアNo,1を誇り、知名度も高いため独立したソフトウェアのジャンルとして捉えられていた方も多いようです。これを機にSAPについて理解を深めていきましょう。この記事ではSAPを理解するために意味や歴史、メリット・デメリットなどを簡単に解説していきます。
SAPはERPの一種です。SAPを知るにあたってまずERPの理解をする必要があります。
ERPとは統合基幹業務システムのことです。ERPという名称はEnterprise Resources Planning(エンタープライズ・ソリューション・プランニング)の略語となっております。
このEnterprise Resources Planningとは日本語訳やると『企業資源計画』という意味を持ち、企業全体の経営資源を有効活用するために様々な経営における観点を統合的に管理・効率化を図るための手法となっております。Enterprise Resources Planning(企業資源計画)を実現するためのソフトウェアをERPパッケージと呼びます。代表的なERPパッケージとしてSAP、GLOVIA、Oracle ERP Cloud、OBIC7などが挙げられます。
SAP | ERP | |
SAPとERPの違い | ERPパッケージの1種 | 統合基幹業務システム |
SAP(エスエイピー)とはドイツのヴァルドルフに本社を構える欧米最大のソフトウェアメーカーSAP社が開発・提供するERPパッケージのことです。SAPという名称は創業当時の社名『Systemanalyse and Programmentwicklung(日本語訳:システム分析およびプログラム開発」の意)』の略式となっております。
呼び名として日本国内では「サップ」と呼ばれることもありますが、正しくは「エスエイピー」のようです。SAPはERPパッケージにおいて国内外共に最も多くのシェアを獲得していることで有名です。その理由の一つとしてERPパッケージを世界で一番最初にリリースしたことが挙げられます。
特徴としてSAPそのものが業務プロセスとなるように開発されていることからシステム内において矛盾や不整合が発生しないモデルとなっております。他のERPパッケージでは各機能単位での設計が重視されており市場の変化や企業の成長と共に発生する業務変化によって矛盾や不整合が発生してしまうことも度々あります。
SAP社はERP以外にもSRMやSCMなど業務系パッケージやクラウドサービスを幅広く展開しております。
SAPの歴史は同社の同業である1970年代まで遡ります。1972年にIBM出身のメンバーで『Systemanalyse and Programmentwicklung』(日本語訳:システム分析およびプログラム開発」の意)社として設立。
翌年の1973年に世界初となるERP『R/1』をリリースします。この頃はメインフレームで動作するアセンブリ言語で記述されておりました。年月を重ねていくことに成長を遂げて1993年にはクライアント・サーバ型に対応した『R/3』をリリースします。同モデルはWindowsやUnixなど複数のプラットフォームに対応していることから顧客開拓の領域を広げていくことに成功しました。オープンシステム時代の波に乗り、『R/3』は最も有名なシリーズとなりました。
2004年になると『my SAP』というR/3の後継機となるSAP ERPシリーズをリリースします。世界各国で益々ERPパッケージの導入が進んでいきその筆頭であったSAPは2017年にフォーブスグローバル2000にランクインする企業の87%が顧客となります。
翌年の2018年に発表された売上高は3兆3000億円とヨーロッパ全体の売上ランキングにてTop100に入る実績を挙げております。
SAPの基本機能を見ていきましょう。
販売管理機能とは企業が注文を受けてから顧客からの支払いを経て、納品するまでの一連の流れを管理する機能のことです。主な機能として見積管理、受発注管理、在庫管理、販売実績管理などが挙げられます。見積管理は見積書の作成・発行。受発注管理は受注・発注状況の管理。在庫管理は仕入、出荷、納品の管理。販売実績管理は売上情報、分析データの管理。このように販売にまつわる全ての業務を一元管理するための機能が用意されております。
生産管理機能とは製造工程を伴う企業が生産・調達計画や在庫管理などを効率よく計画・管理するための機能のことです。製造業がERPを導入する際に最も重要視して機能選定を行うのがこの生産管理です。製造が開始されるルートは企業によって様々で受注生産・見込生産など多種多様な管理方法が必要とされます。またこの生産管理は販売管理と密接な関係を持つ機能が多いです。
会計管理機能とは外部ステークホルダーに対して経営状況を提示する財務会計と内部ステークホルダーに対して提示する管理会計と大きく2つの役割を持ちます。財務会計は外部ステークホルダー(投資家や債権者)に対して経営状況を提示するために財務諸表の作成を主とし資産、負債、純資産の明確化をします。管理会計は内部ステークホルダー(経営者や従業員)が経営状況を正しく把握するために売上、仕入、債権などの会計情報を管理するためのものです。
人材管理機能では採用、人事配置、人事評価、退職など人事に関する一連の流れや勤怠管理、教育・育成、給与計算などといった人事労務に関する全てを管理する機能のことです。社内リソースを可視化することによって採用・募集が必要なポジションの把握や適切な配置換えの検討などが行なえます。また労働基準法に則った社員満足度の高い福利厚生の提供や人事評価を実施するためにも有効に活用されます。
SAPはERPのみならず様々な製品を展開しております。ここではその3つの製品について見ていきましょう。
SAP ERPとは ERPパッケージ市場において最も高いシェアと古い歴史を誇るERPパッケージのトップブランドです。その豊富な機能と数多くの導入実績ノウハウで高い信頼を獲得しております。特徴としてSAPそのものが業務プロセスとなるように開発されていることからシステム内において矛盾や不整合が発生しないモデルとなっております。もちろんグローバル拡張に対応しており40言語、130通貨とグローバルビジネスにおいて十分なまでに取り揃えております。
SAP CRMとは企業のCRM(顧客関係管理)業務を効率的に支援するための業務ソフトウェアです。ERPパッケージ市場において最も高いシェアを誇るSAP社はCRMの分野においてもSalesforce社に次ぐ世界2位のシェアを獲得しております。主要な機能としてはマーケティング(販売計画・リード管理)、セールス(顧客管理、案件管理)などが挙げられます。特徴として同社のSAP ERPと連携しやすいことや検索性能、情報入力、画面構造が優れておりユーザビリティが高いということが挙げられます。
SAP Business Objectsとは通称BIと呼ばれるビジネスインテリジェンスソフトウェアです。
元々独立系ソフトウェアハウスであったBusiness Objects社を2007年にSAP社が買収しました。主な役割としてビジネスネットワーク全体の人、情報、モノ、ビジネスなどを結びつけることでビジネスパフォーマンスを最適化出来るように調査・分析・レポーティングするということが挙げられます。レポーティングとビジュアライゼーション(可視化)に適した一元管理のプラットフォームとして活用されております。
SAPを理解するために意味や歴史、メリット・デメリットなどを簡単に解説させて頂きました。SAPを一言で表すと『欧米最大のソフトウェアメーカーSAP社が開発・提供するERPパッケージ』です。よくその違いに理解を苦しむ方が多いようですがSAPは『ERPパッケージの一種』であり、ERPとは『統合基幹業務システム』を表します。ERPパッケージ市場において最もシェアを獲得する人気の製品だと理解しておくと良いでしょう。SAPについてこの記事で記載されている最低限の内容は理解しておくようにしましょう。