スーパーアプリとはアプリ内で複数のサービスが統合されたプラットフォームの様な役割を持つアプリのことです。私達の生活になくてはならないものになったスマートフォン。様々なアプリの役割を統合したアプリのことを「スーパーアプリ」といい、世界各国で広がりをみせています。この記事では、スーパーアプリが注目を集めている理由やメリット、具体的なアプリの紹介をします。
スーパーアプリとは、アプリ内で複数のサービスが統合されたプラットフォームの様な役割を持つアプリのことをいいます。私達の一番身近なスーパーアプリは「LINE」でしょう。LINEはメッセージや通話といったコミュニケーションツールとしてのサービスからスタートしましたが、今ではLINE Payといった決済サービスやアプリ内の友だちにギフトを贈ることが出来る「LINEギフト」、音楽が聴き放題の「 LINEミュージック」など、それぞれのサービスに応じて別のアプリを起動しなくても一つのアプリ内で日常に必要な様々なサービスを利用することが出来ます。日常のあらゆる場面においてスマートフォンを利用するユーザーにとって一つのアプリで様々な機能を利用出来るというのは非常に利便性が高く、注目を集めています。
スーパーアプリ発祥の国といわれているのは中国です。中国は世界的にみてもスーパーアプリの普及率が高く、スマートフォンでのキャッシュレス決済についてもどの国よりも普及が進んでいると言われています。その背景にはいくつかの理由があります。まず第一に、中国では偽札問題が深刻であった事が挙げられます。キャッシュレス決済の普及が一気に進み、それに伴いアプリ活用が国全体で進んだことからスーパーアプリも広がりました。また中国は政府によるインターネット規制が施されています。
したがって国内のアリババやセンテントを代表するIT企業が国内の巨大なマーケットを獲得するために、スーパーアプリをきっかけにテクノロジー発展したという理由もあります。日本においても新型コロナウィルスの影響で日本企業のDX化がさらに注目を集める様になりました。それに伴いスーパーアプリへの期待も非常に高まっています。
次にスーパーアプリを利用するメリットについて、ユーザー、事業者それぞれの視点で解説していきます。
まず事業者の視点でいうと開発や広告にかかる費用が抑えられるというメリットがあります。iOSやAndroid OSでアプリを開発し公開するには各社にお金を払う必要があります。しかしミニアプリを利用してアプリ開発をする場合は基本的にはスーパーアプリ内で、かつスーパーアプリのフレームワークを活用して開発されるため、0からアプリを作る工程を踏まずとも開発が進められるという点がメリットです。またサービスを公開する際もすでにユーザーを抱えているスーパーアプリ内でリリースするため、広告コストも多少抑えることが可能でしょう。
事業者視点でいうと上記に記載した開発費や広告費のコストカットに付随して、新しいサービスや事業展開についてもスーパーアプリで既存のプラットフォームがあればコストを抑えた上で様々なサービスをスピード感持ってリリースすることが可能でしょう。例えば LINEの例を挙げるとLINE Payで個人間の送金や店舗での支払いが行われると、個人の資産を次は LINE証券で管理、投資するといった展開が生まれます。ある程度のユーザー数が確保できていることが前提ではあるものの既存のアプリから発展して新規のサービス展開が出来るというのはスーパーアプリのメリットといえるでしょう。
私達の生活にはもはやスマートフォンは欠かせなくなっており、様々な日常で必要な情報や趣味、決済などをスマートフォン上で行っています。日本人一人が保有するスマホアプリの数は約99個といわれていますが、実際に使用するアプリはわずか38個程度となっています。そしてほぼ毎日利用するアプリに限ってはせいぜい7、8個です。したがってユーザーが新しくアプリをインストールしても継続的に利用する可能性は低く、アプリ業界は飽和状態といえます。しかしスーパーアプリはすでに多くのユーザーが利用しており、ほぼ毎日アプリを起動する人も多い私達の生活に根付いたものになっています。それだけ一つのアプリ内で様々なサービスを完結できるというのはユーザーにとっては大きなメリットなのです。
上記にも記載の通り、私達の生活にスマートフォンは欠かせないものとなっており、本人一人が保有するスマホアプリの数は約99個と日々利用していないアプリもある中でスマートフォンのストレージ容量の多くを私達はアプリ利用で使っています。スーパーアプリはアプリの必要容量自体が大きいものが多いものの、アプリ内にミニアプリが存在しているため、複数のアプリをダウンロードする必要がなく、端末のストレージ容量の節約にもなります。
スーパーアプリを理解する上で知っておきたいのが「ミニアプリ」です。様々なサービスを提供するプラットフォームの様な役割を持つのが「スーパーアプリ」に対して、そのサービスひとつひとつのサービスアプリのことを「ミニアプリ」と呼びます。従来のネイティブアプリはアプリストアからダウンロードをし、場合によってはアカウント登録をして、ようやく利用することが可能となりますが、ミニアプリの場合はスーパーアプリ内に既にあるため、ダウンロードの必要がなくスーパーアプリを起動するだけで利用することが可能です。
スーパーアプリは2016年頃、中国で開発されました。したがって欧米よりもアジア圏の方がよく利用されています。ここでは世界的に有名なスーパーアプリをご紹介します。
まずはスーパーアプリの先駆けとなったWeChatです。2011年頃中国の大手IT企業であるTencent(テンセント)が開発をしました。中国版の「 LINE」といわれているほど、中国ではメッセンジャーアプリはWeChatが主流です。Wechatも最初はメッセンジャー機能がメインのアプリでしたが、2013年にキャッシュレス決済機能を搭載したことで非常に話題になりました。Wechatの特徴は、ユーザー自身が開発したミニアプリをWechat内で利用出来る仕組みです。開発したアプリが利用されると開発者に売り上げが支払われる為、このサービスは広がりをみせていて、100万個以上のミニアプリが開発されていて、レストランの予約やタクシー配車などあらゆるサービスをWechat内で利用することが出来ます。
Alipayは中国の大手B2Bマーケットプレイスなどを展開するアリババが開発したスーパーアプリです。中国のスーパーアプリといえば上記のWechatかAlipayといわれているほど、中国国民が利用しています。元々アリババといえば中国最大級であるネットショッピングモール「淘宝網(タオバオ)」が有名で、サービス開始当初は商品を購入しても実際に商品が届かなかったり、品質の悪いものが届いたりするなどのトラブルが頻発していました。その課題を解決するためにユーザーに「Alipay」を通して代金を支払い、販売事業者にも「Alipay」から届いた支払い完了通知を元に商品を発送するという仕組みに変えました。
それをきっかけにオフライン決済や資産運用など様々なミニアプリを開発し、中国決済サービスにおいてはシェアNo. 1。東南アジアでもユーザーが増え、日本でも中国旅行者向けに30万店舗以上が Alipay決済に対応しています。
Gojekはインドネシアのスタートアップ企業です。2010年にインドネシアで設立されましたが、Gojekのアプリは東南アジア各国で利用されており、人々の生活に欠かせないアプリとなっています。2015年頃からタクシーの配車サービスの事業を始め、ユーザーのニーズに合わせてバイク配車サービス「GoRide」や車の配車サービス「GoCar」、買い物代行サービス「GoSend」などユーザーの声を元にミニアプリを次々と開始し、東南アジア全体にユーザーを持つ巨大なスーパーアプリ企業になりました。Gojekは企業価値が100億ドル(約1兆800億円)を超える巨大未上場企業「デカコーン」にも入っており(世界で20社ほど)、多くのユーザーを抱えています。
2021年3月にYahoo! JAPAN(ヤフー)と LINEという日本の巨大インターネット企業が経営統合したことで日本のスーパーアプリ業界にも大きな影響を与えました。次に日本におけるスーパーアプリについて具体的にご紹介していきます。
日本国内で最も利用されているスーパーアプリといえば「 LINE」でしょう。LINEは元々2012年にメッセンジャーアプリとして開発をされました。その後2015年には音楽配信のミニアプリである「 LINE MUSIC」、アルバイト求人情報サービスの「LINEバイト」、2016年には決済サービスの「LINE Pay」をリリースしました。他にも資産運用の「 LINE証券」や「 LINEトラベル」など、様々なミニアプリを利用することが可能です。まさに日本を代表するスーパーアプリといっても過言ではないでしょう。
日本の大手インターネット関連会社であるソフトバンクグループ(ヤフー)が運営するスーパーアプリがPayPayです。PayPayといえば決済サービス利用のイメージが強く、個人間送金や店舗決済のシェアは国内最大級です。しかし最近ではスーパーアプリ化が進んでいます。アプリ内での投資やオンラインフリマなど様々な機能が追加されています。また上記でも記載した通り、PayPay自体も多くのユーザーがいますが、2021年3月に LINE株式会社と経営統合したことから今後もさらに日本のスーパーアプリ業界の発展に期待がされています。
スーパーアプリのメリットやミニアプリとの違い、実際の代表的なスーパーアプリについて紹介をしてきました。ユーザーにも事業者にも多くのメリットがあるスーパーアプリは今後も需要が高まり続けると考えられます。2021年3月のYahoo社と LINE社の経営統合の動きからもみてとれる様に、GAFAを代表する海外大手テック企業に立ち向かっていくにはスーパーアプリ化は欠かせない流れです。今後はIoT技術を元にしたスマートシティとの連動に注目し開発を進めている企業も増えてきており、私達の生活をより豊かにしてくれるような技術やサービスの発展が今後も期待されています。