SCMとは「supply chain management」の略で「供給連鎖管理」と日本語では訳されます。サプライチェーンとは、商品が原材料の調達から消費者である私達の手元に届くまでの調達の仕組みのことを言います。例えば消費財メーカーの場合、原材料を調達し、工場で製品を作り、問屋に出荷をし、小売店の店頭で販売されて消費者の手元に届きます。この様にメーカーの商品が私達の手元に届くまでにはいくつかの事業者が携わっているのです。サプライチェーン・マネジメントとは、その業務プロセスを管理する仕組みの事であり、SCMコンサルタントは管理システムの導入支援によって収益改善や運用コストの削減などをクライアントに提案していきます。
SCMコンサルタントの役割はクライアントのSCM戦略の視点からコスト削減と売上の最大化を目指すことです。原材料~販売に至るまでのサプライチェーンコストは企業経営に大きく影響を及ぼすものであり、「第二の収益源」とも言われています。SCMの観点から企業経営を支えるのがSCMコンサルタントの任務なのです。
具体的な業務内容としては、クライアント企業におけるSCMシステムのIT構想からシステムの導入支援、調達コスト削減のための手法考案やSCMのアウトソーシング(BPO)管理などが挙げられます。
SCMシステムの導入は企業の売上にも大きく関わるため、コストダウンがどの企業でも重要な課題となっている現代においては非常に重要な役割を担う職種ともいえます。
次にSCMコンサルタントの具体的な仕事内容について解説していきます。
まずはじめにクライアントのSCM(サプライチェーン)の現状を把握し、経営課題を分析します。クライアントの経営層は勿論のこと社内の各部門や供給元や仕入先などのサプライヤーなど生産から販売には社内外問わず様々な関係者が関わっているため詳しくヒアリングを行っていきます。そして各業務プロセスにどのような問題があるかを把握し改善方法を検討していきます。
クライアントのサプライチェーンにおける課題点を分析することが出来たら具体的な戦略立案を行います。どのような提案をおこなえば、より効果的に問題改善が出来るかを検討し判断していきます。サプライチェーン・マネジメントのプロジェクトには数多くのシステムが導入されるため、現状分析に基づいたアプローチと業界のトレンドやSCMに関するナレッジなども参考にしながら計画を立案していきます。
クライアントの業務に最適なシステムの検討が出来たら、ニーズに合わせたSCMシステムの導入をしていきます。大規模なシステム導入を予定している場合は、複数のシステムを導入する必要があったり、導入済みのシステムに新たにSCMシステムを新規導入するケースもあります。したがってクライアントのニーズに合わせたシステムのカスタマイズが必要になります。またSCMコンサルタントはシステム開発の際、PMやSEとコミュニケーションを取りながらプロジェクトをマネジメントしていきます。
システムを導入した後は、クライアントユーザーに向けての教育であったり、保守、運用まで携わることもあります。またシステムを用いてクライアントの生産性向上やコスト削減といった成果を出すことがSCMコンサルタントの最終的な役割でもあるため、クライアントと共に立てた在庫削減目標(KGI)や業務指標(KPI)を元に実績として成果が出ているかを検証し、施策を実行しながらPDCAを回していくのもSCMコンサルタントの仕事です。
次にSCMコンサルタントに必要な能力を見ていきましょう。
SCMコンサルタントは原材料の調達から出荷までの各プロセス(サプライチェーン)における高度な専門的知識が必要になります。具体的には「物流」「購買」「需要予測」「在庫管理」などが挙げられ、各項目において深い知識を用いながらより生産的で効率的な成果を出すにはどのような改善策があるかをデータを分析しながら検討しなければいけません。具体的に挙げると、物流プロセスにおいてはサプライチェーンプランニングから倉庫内オペレーションの設計などの知識が必要です。
購買プロセスでは、納入先の選定から、購買オペレーションの見直しなどを行っていきます。需要予測については、製品やサービス毎に季節や為替の値動きの推移などのデータを用いて各業務プロセスにデータを活かし最適コストで運用を検討します。在庫管理プロセスにおいては、製品の品質管理の観点や適正在庫を維持するためのデータ分析力が必要になります。いずれにせよSCMにおける知見と高度な分析力が必要になります。
SCMコンサルタントはクライアントの経営課題解決にあったパッケージシステムを提案する仕事であるため、システムの特徴や機能を詳しく把握しておく必要がありますし、システム開発のマネジメントに従事する場合もあるため、システム導入に関する知識も必要になります。またサービスも日々アップデートが行われるため、最新の知識を常に学んでおく必要があります。
SCMコンサルタントはシステム導入支援を行うことでクライアントの経営課題の解決を行い、利益を増やすという役割が課せられています。システムに関する知識や幅広い経営や業界の知識はもちろん必要ですが、そもそもクライアントの経営課題の本質を見極める能力がなにより重要になります。課題の本質を見つけるためには問題を洗い出し、分析し、筋道立て解決策を考えるロジカルシンキングを用います。
企業のサプライチェーンには、経営層は勿論のこと社内の各部門や供給元や仕入先などのサプライヤーなど生産から販売には社内外問わず様々な関係者が関わっています。関係者と良好な関係を築きながらプロジェクトを進めていくこともSCMコンサルタントの重要な仕事になります。またSCMコンサルタントが携わる開発現場においてもエンジニアやプログラマーなどといった多くの人が関わっているため、プロジェクトを円滑に進めていくために、コンサルタントが人員の管理や納期管理、品質管理に携わり、関係者とコミュニケーションを取りながら進めます。
次にSCMコンサルタントの平均年収や今後の将来性など、市場価値について詳しく解説していきます。
SCMコンサルタントの年収は所属企業やスキルによっても大きく幅があるため、一概にはいえませんが大体600~800万円程度が相場といわれています。企業の経営陣がクライアントになり企業の経営の根源を支える仕事でもあるため経験や知見が豊富なコンサルタントの方が重宝される傾向にあります。したがって経験を積んでいく20代中盤~30代前半のコンサルタントは600~800万円程度の年収になりますが、経験や知見も豊富で専門性の高いスキルを持った人材であれば年収1000万円を超えるコンサルタントも多くいます。
SCMコンサルタントの活躍する業界は多岐に渡ります。「モノをつくって売る」ビジネスを行っている有形商材を扱っている企業であればサプライチェーン・マネジメントは存在しているからです。具体的に挙げると製造業や消費財メーカーなどが挙げられます。また物流業界や小売業界においても最適なSCMシステムの導入が経営の鍵を握っていると言っても過言ではないほど経営に大きく関わる基盤です。
SCMコンサルタントとして活躍をしたい場合は、総合コンサルティングファームに所属しSCM部門でプロジェクトに携わるのが一般的です。また商社やメーカーに就職をして物流企画やシステム導入に携わるという方法もあります。
SCMコンサルタントは今後も将来性のある職種といって良いでしょう。その背景にまず挙げられるのは人手不足です。例えばインターネットの普及や物流システムの高度化もあり近年物流業界での人手不足は深刻です。生産~出荷までのプロセスでいかに人件費をかけないかという視点はコストダウンにも非常に重要な鍵を握っています。
またビジネスの急速なグローバル化もSCMが注目を集めている背景の一つです。企業間の競争はより激しくなり、品質を保ったままいかにコストを抑えてスピードを挙げられるかが企業の成長には欠かせないのです。そういったいくつかの背景もありSCMコンサルタントの需要は今後も高まり続けるでしょう。
SCMコンサルタントを目指すためにはどんなスキルが必要なのか、未経験でもなれるのか、など具体的に解説していきます。
新卒でSCMコンサルタントを目指す場合は総合コンサルティングファームに就職をしてSCM導入の開発プロジェクトに携わるという道が代表的です。但しコンサルティングファームに新卒で入社する場合は、いきなり希望の配属プロジェクトに必ず携われるわけではありません。やはり商品知識であったり、開発や設計現場の経験や知見も必要になるため、まずは基礎を学ぶための経験を積む必要があります。またコンサルティングファームへの就職を目指す場合、超難関といわれるほど倍率も高く、求められる素養も多い為、有名大学を卒業しておくことが有利となります。
また「超上流」と言われるITの戦略的活用をクライアントに提案する工程を任されるため、専門知識を常に学び吸収し続ける力や分析的思考が出来るかを採用側もみています。また外資系クライアントとのやりとりやグローバルプロジェクトに携わる可能性もあるため、ビジネスレベルの英語力も必要になるでしょう。
SCMコンサルタントの求人は中途の場合、SCMに関する業務知識や経験が必須の場合が多いです。需要が多い職種であるため、SCMコンサルタントとしての実務経験はなくても応募できる求人も多いですが、製造業や事業会社で企画担当者としてシステムの導入経験があったり、調達、生産、需要、販売という各プロセスにおいてのシステム知識は最低限必要になります。
またSIer企業でのSCMプロジェクト開発にエンジニアとして携わり、コンサルタントとしてキャリアチェンジする人もいます。新卒同様、中途の場合もグローバルプロジェクトに携わる可能性もあるため、ビジネスレベルの英語力も必要になるでしょう。
次にSCMコンサルタントを目指すにあたり学んでおくと良い資格について詳しく説明していきます。
SCM検定とは日本サプライチェインマネジメント協会(日本SCM協会)が運営している資格です。SCM協会領域は開発から生産、そして物流、消費に至るまで幅が非常に広いため、この資格ではとくにそのプロセスの中の「ロジスティクス(物流)領域」に絞られた出題がメインになっています。
受験資格には、
①ロジスティクス領域における実務経験1年以上、
②日本SCM協会指定の勉強会、講演会に個人会員、あるいは法人会員の資格を保有したうえで指定回数以上の出席の者、
③日本SCM協会が志願者から申請を受けたうえで審査し、受検要件を満たすと判断された者
という条件があるため、ロジスティクス業界ですでに実務経験があり、より高度な知識を網羅的に習得したい人向けの試験になっています。
ITサービスマネージャ試験とは情報処理推進機構が運用している資格です。情報処理推進機構によると、ITサービスマネージャ試験が対象になるのは、「高度IT人材として確立した専門分野をもち、サービスの要求事項を満たし、サービスの計画立案、設計、移行、提供及び改善のための組織の活動及び資源を、指揮し、管理する者」と定義されています。
したがってSCMに関わるコンサルタントだけでなくSCMシステムにおける開発プロジェクトのPMであったり、運用保守に携わるエンジニアも多く受験する資格となります。主には開発プロジェクトをマネジメントする立場にある人に向けた試験内容となっていますが、SCMコンサルタントとしてプロジェクトの管理に携わったり、効率的なシステム運用に関する知識を学ぶことが出来るため取得しておいて損のない資格といえるでしょう。近年の合格率は14%ほどとなっているため、難易度はやや高めです。全くの実務経験のない人よりはシステム開発に携わる人向けの資格となっています。
これまでSCMコンサルタントの具体的な業務内容から役割、求められる能力や市場価値について解説してきました。ビジネスのグローバル化や労働人口の減少といった課題を持つ日本企業にとって、より生産的で効率的な経営のサポートをするSCMコンサルタント。今後もその需要は高まり続けます。またクライアントの経営の根源に携わる非常にやり甲斐が大きい仕事といっていいでしょう。