フリーランス(個人事業主)として働く上で、自分自身でやらなくてはいけないのが「確定申告」です。事業において1年間に掛かった費用と経費を記録し、簿記を提出しなくてはなりません。これが初めての方にとってはなかなかハードルが高く、つまづいてしまう人も多いのではないでしょうか。現代では帳簿を簡単につけることができる会計ソフトも提供されておりますし、資金に余裕が出てきたら税理士にお金を払ってお願いするという手もあります。今回の記事では確定申告初心者の方に向けて基礎の部分からわかりやすく解説していきます。
確定申告とは、個人所得の計算期間は1月1日〜12月31日の期間の収入・支出、医療費や扶養親族の状況などから所得を計算した申告書を税務署に提出を行い、支払う税額を確定することを言います。毎年2月〜3月頃が確定申告を行う時期となります。
フリーランスが負担しなくてはならない税金には所得税、住民税、事業税、消費税があります。確定申告というのは、これらのうち「所得税」の税額を自ら計算して納税することを言います。「住民税」「事業税」については確定申告を行った後に、地方自治体が税額を算出し納税書が別途郵送で送られてくることになるため、フリーランス本人が手続きを行う必要はありません。
フリーランスが事業を行い、1年間に生じた所得が基礎控除の38万円を上回った場合、確定申告を行う義務が発生します。ここで言う「所得」と言うのは「収入」とは異なりますので注意が必要です。ちなみに基礎控除というのは所得税や住民税などの計算を行う際に、全員一律で差し引かれる控除のことです。
例えばデザイナーが年間50万円の「収入」を稼いでいたとして、必要経費として算出される費用が「交通費」「通信費」「外注費」などを含めて年間10万円掛かっていた場合、「所得」は40万円となり、基礎控除の38万円を上回るため、確定申告をする必要があります。この他に社会保険料の支払い、生命保険料控除なども含めて計算し直した際に38万円を下回る場合は確定申告をする必要がなくなるため、漏れなく収支を申告するようにしましょう。
確定申告が必要のない場合は、一年間に生じた「所得」が基礎控除の38万円を下回った場合や事業が赤字である場合などが挙げられます。フリーランスの場合は赤字を最大3年間繰り越すことができるため、前年赤字を出してしまっており翌年は黒字の場合などに、前年の赤字を繰り越し控除ができます。そのため事業所得が赤字になった年も翌年以降のためにしっかりと帳簿に記録を残すようにしましょう。
結論から言うと、フリーランスには年末調整が基本的に必要ありません。
フリーランスが自分で行わなくてはいけない確定申告と年末調整にはどのような違いがあるのでしょうか。その違いを理解するためにまずは年末調整について知ることが必要です。
年末調整とは、会社員や公務員などの給与所得者に対して、所得税の過不足を計算して調整することを呼びます。会社員や公務員の経験がある方はご存知かと思いますが、1月1日〜12月31日の1年間に支払われた給与から「源泉徴収」という形で天引きされている金額があります。しかしあらかじめ設定されている毎月の税額はあくまで概算になるため、実際に年末のタイミングに誤差が生まれるケースがあります。その過不足分を調整し、多く払っていた場合は超過分が戻ってきます。また不足していた場合は不足分を追加で支払う必要があります。
以上が簡単に年末調整についてになります。
最初にフリーランスには年末調整が不要とお伝えしましたが、もし年度の途中で会社員である期間があった場合、会社員期間の分の源泉徴収票を前職場からもらい、確定申告後に会社員時代の差額を納めます。
ここからは実際に確定申告を行う際に選択する青色申告・白色申告についてや、申告に必要な書類、申告の手順などについて詳しく解説していきます。
まずは確定申告をする際に検討しなくてはならない「青色申告」と「白色申告」について。確定申告には実は3種類あり、控除額によって3段階に分けられている形になります。簡単にそれぞれの違いを紹介させて頂きます。
上記の通り3通りの方法があり、下に行くほど節税効果が高くなっていますが、その分手続きの煩雑さが増すため、簿記の知識が必要になってきます。白色申告と青色申告の10万円控除の場合、単式簿記と言って収入欄から支出欄の合計を引いた金額を示した帳簿は、家計簿などに近く、比較的手軽に誰でも計算・記入できるところがメリットです。一方で青色申告の65万円控除で申請する場合に必要となる複式簿記は貸し借りが一致するように記載するもので簿記を学んだことがない方にとっては、少し抵抗感がある記述方法を取る必要があります。
確定申告の際に必要な書類には税務署で入手するものと自分で用意するものがあります。
確定申告書にはAとBの2種類があるため、自分が使用するべき書類を選びましょう。もしどちらを選べば良いのか不安な方は税務署の窓口で質問すれば丁寧に答えてくれると思います。これらの書類は税務署窓口で入手するか、税務署のホームページからダウンロードをすることができます。平日しか開庁していない税務署が多いので、土日祝日出ないと動けない人は書類をダウンロードして印刷すれば問題ありません。
これら書類と一緒にシャチハタではない印鑑を持って行きましょう。
ここからは確定申告の手順について解説していきます。
フリーランスの年度は1月1日〜12月31日と一律で決まっており、1月1日を期首、12月31日を期末と呼びます。確定申告ではこの1年間の所得に対して税額を計算し、納税する手続きになります。
確定申告を青色申告で行う場合、日々の帳簿付けが必要になってきます。また後からまとめてやる場合でも領主書だけはすぐに計算できるように月ごとにまとめて封筒に収納しておくなど、細かい工夫を行うことで帳簿付けの工数を大幅に削減することができます。現代では便利な会計ソフトがたくさん用意されているため、そちらを使用すると気軽に帳簿付けが習慣付くかもしれません。
必要経費は事業に関わると認められる経費のことを言います。会社員時代の経費と認められる内容が異なりますので、フリーランスの経費として認められる物を事前に確認し、日々意識しておくようにしましょう。自宅が事務所の場合、家賃や水道光熱費など一部を経費として計上することができますので、そちらの計算方法などもしっかりと確認するようにしましょう。共通して経費を確認できる「領収書」が必要となるため、しっかりと保管・管理を行うようにしましょう。
経費を勘定科目に仕訳して計上して行く必要があります。経費については会計ソフトを利用した計算がおすすめです。「日付」「摘要」「勘定科目」「金額」を1件ずつ間違いのないように入力すると自動的に内訳ごとの金額を集計することができるため、それを元に勘定科目内訳明細書を完成させます。
所得控除とは、所得金額から控除できる金額のことを言います。家庭状況など個人的な事情を考慮し、税金金額に反映させることができる制度があるのです。所得控除には14種類あり、個人の状況により適用されるものとされないものがあります。これらは原則、申請者側から申請をあげない限り控除を受けることができないため、しっかりと内容を確認し、忘れずに申告することをお勧めします。
税額控除は所得税から控除できる金額のことを指します。税額控除にも様々な種類があり、申告者側からの申告がない限りは控除が適用されません。株式の配当金を受けている方、住宅ローンを支払っている方、年度途中でフリーランスになり、一部の所得税を源泉徴収されている方などは税額が控除されるので、しっかりとチェックしましょう。
確定申告をしていない場合、管理している税務署にバレてしまうのでしょうか。
ここでは確定申告をしないことが発覚するキッカケを紹介します。
「法定調書」というのは会社がどの人にどれくらい給与を支払ったかということが記載されている書類で、フリーランスの方でも法定調書の提出が必要がになる場合があります。法定調書により自分が貰った報酬の金額が税務署に伝わり、確定申告をしていないことが発覚することがあります。
企業に対して入るイメージがある税務調査ですが、フリーランスに対して調査が入るケースも稀にあります。確定申告していない場合、税務調査が入ってしまうと一発で発覚してしまいます。また確定申告はしていても、経費の計上を適当に行なっていると、指摘される可能性があります。
フリーランス(個人事業主)の確定申告の大まかな概要と手順について紹介させていただきました。独立した初年度の確定申告は初めてのことだらけで戸惑うことも多くあると思います。今はインターネット上にも情報がたくさんありますし、便利な会計ソフトを安価に使える時代です。知らずに損してしまったということが無いように、必要な情報をしっかりとキャッチアップし、できる限り効率的に確定申告を乗り越えましょう。